海辺や動物園で見かけるペリカン。その大きなくちばしを器用に使って魚をすくう姿は、見ていて気持ちがいいほどダイナミックですよね。
でも、ちょっと耳にしたことはありませんか?「ペリカンって、魚だけじゃなくて何でも食べるらしいよ」という話。
えっ、本当に?と驚く人も多いはずです。実はこの言葉には、ちゃんと理由があるんです。
ペリカンは基本的に魚が主食ですが、環境によっては魚以外の生きものを食べることもあります。そんな一面が、「なんでも食べる」という印象につながっているんですね。
この記事では、国内外の動物園や博物館など信頼できる情報をもとに、なぜペリカンが“なんでも食べる”と言われるのかを、やさしく解説していきます。
結論:ペリカンは「魚が主食」。でも、環境しだいで“何でも食べる”ように見える

一言でまとめると、ペリカンは魚を主食にしている鳥です。
ただし、魚が少ない場所にいたり、簡単に手に入る別の生きものがいたりすると、魚以外を食べることもあります。
つまり「なんでも食べる」というより、状況に合わせて食べものを選ぶ鳥なんです。
このような性質は「機会食性(きかいしょくせい)」と呼ばれ、環境に柔軟に対応する力のひとつです。
実際に動物園や研究機関の記録でも、ペリカンの主食は小魚(イワシやアジなど)である一方、カエルやエビ、ザリガニなどの甲殻類を食べることも確認されています。
そして、まれにですが小鳥のヒナや弱った動物を飲み込むこともあり、その“何でも食べてしまうように見える行動”が、この評判を生んだのです。
では、なぜペリカンはそんな行動をとるようになったのでしょうか?
次は、その理由と背景を詳しく見ていきましょう。
理由・背景:なぜ「なんでも食べる」と言われるの?

ペリカンが“なんでも食べる”と言われる理由には、実はいくつかの背景があります。
それは「環境の変化に対応する力」「道具(くちばし)の形」「人との関わり方」など、ペリカンの生活スタイルそのものに関係しています。
① 環境に合わせて食べる「機会食性」の鳥
ペリカンは、食べものの種類を固定せず、その場にあるものをうまく利用する「機会食性(きかいしょくせい)」というタイプの鳥です。
魚がたくさんいるときは魚を選びますが、少ないときにはカエルやエビ、ザリガニなどを食べることもあります。
「なんでも食べる」というより、“そのとき食べられるものを賢く選んでいる”のです。
オーストラリア博物館(Australian Museum)の記録によると、モモイロペリカンは主に魚を食べますが、時にはカニやカエル、小さなカメを食べることもあるそうです。
このように、ペリカンは生きる環境によって食べものを変える柔軟さを持っています。
② くちばしとのう袋は“すくう道具”として万能
ペリカンの特徴といえば、あの大きなくちばしと下に広がる「のう袋」。
これは、もともと水中の魚をまとめてすくい上げるための道具ですが、魚以外の小さな生きものを捕まえるのにも使えます。
そのため、結果的にいろんな生きものを口にできる構造になっているんです。
「何でも食べたい」というより、「すくえるものをすくう」結果、食べるものが多様になるわけですね。
③ 人の近くで暮らす個体もいる
近年では、漁港や観光地など、人の活動が多い場所にペリカンが現れることもあります。
魚を扱う場所では、落ちた魚や切れ端などを拾って食べることがあり、人から餌をもらう個体もいます。
このような姿を見た人が、「ペリカンって何でも食べるんだね」と感じるのも無理はありません。
ただし、これは野生の本来の姿ではありません。
人の食べもの(パンやお菓子など)はペリカンにとって栄養が合わず、体調を崩す原因にもなります。
自然の中では、ペリカンはあくまで魚中心の生活を送る鳥なんです。
では、実際にペリカンはどんなものを食べているのでしょうか?
次は、具体的な食べものと観察のポイントを紹介します。
具体例:どんなものを食べる?観察のポイント

ペリカンの食べものは、意外と幅広いです。
とはいえ、なんでも無差別に食べているわけではなく、環境や季節、住んでいる場所によって変わるというのがポイントです。
ここでは、よく食べるもの・ときどき食べるもの・まれに食べるものの3つに分けて紹介します。
よく食べるもの(主食)
ペリカンの主食は、やはり魚です。
海辺や湖、川など、水辺のどこでも魚を上手にとらえます。
イワシ・アジ・コイ・フナなど、小型〜中型の魚をまとめてすくい上げて食べる姿は迫力満点です。
動物園などの飼育環境でも、毎日与えられているのはアジやサバなどの魚類。
これは野生と同じ食性を保つためなんですね。
ペリカンのくちばしは、水中で動く魚をすくうのにとても適しており、魚を見つけると数羽が協力して群れで捕まえることもあります。
ときどき食べるもの(環境しだい)
魚が少ない場所や、淡水域などでは、甲殻類(カニ・エビ・ザリガニ)や両生類(カエルなど)を食べることもあります。
甲殻類や両生類、は魚のように水中を俊敏に逃げ回ることは少なく、ペリカンにとっては捕まえやすい獲物。
特にザリガニや小エビは、水の濁った場所でも見つけやすいため、ペリカンにとってはちょうど良い「代替食」になるのです。
また、オーストラリア博物館の観察では、小さなカメを食べた例も報告されています。
これは魚が少ない乾燥地帯などで見られる行動で、環境への順応力の高さがうかがえます。
まれに食べるもの(特殊な状況)
ごくまれに、ペリカンが小鳥のヒナや弱った動物を丸のみにする姿が観察されています。
イギリスやアメリカの研究では、魚がほとんどいないときや、ヒナが巣の近くにいたときなど、非常に限定された条件下で起こる行動とされています。
こうした映像がSNSなどで話題になることから、「なんでも食べる」という印象が強まってしまうのかもしれませんね。
ただし、動物園のような管理された環境ではこのような行動はまず見られず、あくまで自然の中での一時的な現象です。
観察のポイント
- 水面を横一列になって進むときは、魚を追い込んでいるサイン
- くちばしを水に突っ込んで左右に動かしていたら、魚を探している最中
- 群れで動いているときは「協力して捕まえる作戦」中
- 観光地などで人のそばにいるときは、餌をもらい慣れている可能性あり
こうした行動を知ると、「ペリカンがなぜ何でも食べるように見えるのか」がよりリアルに感じられるはずです。
では、そんなペリカンにまつわる「よくある勘違い」や「注意したいポイント」には、どんなものがあるのでしょうか?
よくある質問・注意点(迷いやすいポイント)

ペリカンの食性を知ると、
「本当にそんなに何でも食べるの?」
「人の食べ物も大丈夫なの?」
…など、いろいろ気になる疑問が出てきますよね。
ここでは、よくある質問と、観察時に気をつけたいポイントをまとめました。
Q1. ペリカンは本当に「なんでも食べる」の?
いいえ。実際には、魚が中心です。ペリカンが魚以外を食べるのは、魚が少ない環境や、たまたま他の生きものが目の前にいたときなど、限られた状況だけ。
「なんでも食べる」というよりは、「食べられるチャンスがあれば食べる」という性質です。
SNSや動画で「ペリカンがヒナを丸のみにした」という映像を見かけることがありますが、それは自然界では非常に珍しい行動。
ふだんは魚を主食として、群れで協力しながら捕まえています。
Q2. ペリカンに餌をあげてもいいの?
基本的にNGです。人の食べ物(パンやお菓子など)は、ペリカンの体に合いません。
また、人から餌をもらうことに慣れてしまうと、野生での本来の行動(自分で魚を捕まえる力)を失ってしまう恐れがあります。
環境省でも、野生動物への安易な餌付けは控えるよう呼びかけています。
見かけたときは、距離を保って静かに観察するのが一番です。
Q3. ペリカンは昆虫や植物も食べるの?
ペリカンが昆虫や植物を積極的に食べることはほとんどありません。
魚や甲殻類のようにタンパク質を多く含む動物性の餌を主に食べるため、草や木の実などは基本的に口にしません。
ただし、水辺に浮かぶ草や藻をいっしょに飲み込むことはありますが、これは意図的に食べているわけではないと考えられています。
Q4. あの大きなくちばしは「なんでも食べるため」?
違います。ペリカンのくちばしは、あくまで魚をすくうために特化した形なんです。
のう袋(のどの袋)で水ごと魚をすくい上げ、余分な水をこぼしてから飲み込みます。
その形があまりに万能そうなので、「大きいから何でも食べられる」と思われがちですが、目的はとても明確なんですよ。
Q5. 動物園では何を食べているの?
動物園では、アジやサバなどの魚が主な餌です。
種類や個体の大きさによって量が調整され、野生に近い食生活を保てるように工夫されています。
施設によっては給餌の時間を公開していることもあるので、見学してみるのもおすすめですよ。
ペリカンを正しく理解することで、「なんでも食べる」という言葉の裏にある本当の姿が見えてきます。
まとめ:ペリカンは「魚中心の“機会食”の鳥」

- ペリカンは魚を主食とする鳥で、イワシやアジなどの小魚をすくって食べます。
- 魚が少ない環境では、甲殻類(カニ・エビ)や両生類(カエル)などを食べることがあります。
- ごくまれに小鳥のヒナや弱った動物を飲み込むこともありますが、これは一時的な行動です。
- 「なんでも食べる」というより、その場にある食べものを上手に選ぶ“機会食性”の鳥と考えるのが正確です。
- あの大きなくちばしは魚をすくうための道具。万能に見える形が「なんでも食べる」という誤解につながります。
- 人が与える食べ物はペリカンに合わないため、野生では距離を保って見守ることが大切です。
ペリカンは「なんでも食べる」ではなく、環境に合わせて生き抜く知恵を持つ鳥。
今度見かけたら、そんな柔軟でたくましい生き方に注目してみてください。


