ヨーグルトメーカーを使えば、自宅でも手軽にヨーグルト作りが楽しめます。
牛乳と市販のヨーグルト、あるいは専用の種菌を入れてスイッチを押すだけ。とても便利で健康的な習慣として人気です。
ところが、いざ作ってみると…
- 「全然固まらない」
- 「飲むヨーグルトみたいにシャバシャバになってしまった」
このような声が多いのも事実です。せっかく作ったのにスプーンですくえない状態だと、ちょっとがっかりしてしまいますよね。
実は、ヨーグルトがゆるく仕上がってしまうのには明確な原因があります。
牛乳の種類や乳酸菌の特性、温度や発酵時間の設定など、いくつかの条件が重なることで、固まり方に大きな差が出るのです。
逆に言えば、これらを正しく理解して調整すれば、自分の好みに合わせた「硬めのヨーグルト」も十分に作れるようになります。
これからヨーグルトメーカーを使い始める方はもちろん、すでに「なんだかいつも飲むヨーグルトっぽい仕上がりになる」と悩んでいる方も、ぜひ参考にしてみてください。
ヨーグルトが“ゆるい(固くない)”主な原因はこの5つ

1. 牛乳の中身(無脂乳固形分・たんぱく質量)が足りない
ヨーグルトの「かたさ」は、牛乳の中にあるたんぱく質(カゼイン)が、乳酸菌の働きで網のように固まることで生まれます。そのため、もともとたんぱく質や無脂乳固形分が少ない牛乳を使うと、どうしても“ゆるい”仕上がりに。
特に次のようなタイプは固まりにくい傾向があります。
- 低脂肪牛乳・無脂肪牛乳
- 加工乳(「成分調整」「濃縮還元」などの表示があるもの)
これに対して、成分無調整牛乳や高たんぱくタイプを使うと、しっかり固まりやすくなります。つまり、「素材の濃さ」がヨーグルトのかたさを決めるのです。
2. 発酵温度が合っていない
ヨーグルトの主な乳酸菌(ブルガリア菌・サーモフィラス菌)は、およそ40〜43℃で最も活発に働きます。温度が低すぎると発酵が進まず、固まらないまま終了してしまいます。逆に高すぎると乳酸菌が弱ってしまい、ホエイ(水分)が分離しやすくなることも。
ヨーグルトメーカーによっては温度にムラが出ることもあるため、
- 温度設定を確認する
- 置き場所を変えてみる(寒い部屋や冷風の当たる場所を避ける)
など、小さな工夫でも改善する場合があります。
3. 発酵時間が足りない、または長すぎる
時間が短すぎると、乳酸菌の働きが途中で止まり、“とろみ”のまま終わってしまいます。逆に、長く発酵させすぎると酸が強くなり、水分が分離して結果的にゆるく見えることもあります。
一般的には、
- 標準:40℃前後で8〜10時間
- 固めにしたい場合:10〜12時間
が目安です。ただし、家庭の室温や牛乳の温度にも影響されるので、何度か試して「自分の環境でちょうどいい時間」を探すのがおすすめです。
4. 種菌(ヨーグルトのもと)の性質
ヨーグルトといっても、実は使われている菌の種類はさまざまです。同じ温度・時間でも、菌の性質によって固まり方が変わるんです。
たとえば、
- 一般的なヨーグルト(ブルガリア菌など) → 約40℃前後でしっかり固まる
- カスピ海ヨーグルト(クレモリス菌) → 約25〜30℃でゆっくり発酵し、トロトロの仕上がり
つまり、「カスピ海ヨーグルトを高温で発酵」「飲むヨーグルトを種菌に使う」など、菌に合わない条件で作るとゆるくなるのです。まずは「無糖プレーンタイプ」で試すのが失敗しにくいですよ。
5. ホエイ(乳清)が多く出ている
発酵後に見える上澄みの透明な液体(ホエイ)は、ヨーグルトが壊れて水分が出ている状態です。ホエイ自体は栄養豊富で悪いものではありませんが、多く出ると“水っぽく”見えてしまいます。
次のようなときにホエイが増えやすいです:
- 発酵後にそのまま常温放置している
- 振動や衝撃でゲルが崩れた
- 長時間発酵しすぎて酸が強くなった
発酵が終わったら、すぐに冷蔵庫に入れて発酵を止めることがポイント。これだけでも、ホエイの量をかなり抑えられます。
最後にもう一つ。
ヨーグルトは“菌の世界”なので、清潔さもとても大切です。容器やスプーンに雑菌が混ざると、乳酸菌がうまく働かず固まりにくくなることもあります。熱湯消毒やアルコール除菌をして、清潔な状態で仕込むようにしましょう。
硬めに仕上げるための対処法

ヨーグルトがゆるくなってしまう原因がわかったら、次は「どうすれば硬く作れるか」です。
ヨーグルトメーカーの設定や材料を少し変えるだけで、見違えるようにしっかりしたヨーグルトが作れるようになります。ここでは、家庭で簡単に試せる実践的な方法を紹介します。
1. 成分無調整牛乳を使う

ヨーグルトの基本は“牛乳の濃さ”です。成分無調整牛乳は、加工乳よりもたんぱく質と無脂乳固形分が多く、発酵時にしっかりゲル(固まり)を作りやすくなります。
もし、もっとかためにしたい場合は、次のような工夫もおすすめです。
- スキムミルクを小さじ1〜2杯加える(無脂乳固形分を補う)
- 高たんぱくタイプの牛乳やロングライフ牛乳を使う
- 生クリームを少量混ぜる(コクと粘度が増す)
こうした工夫で、より濃厚でスプーンですくえる“食べるヨーグルト”に近づきます。
2. 温度と時間を調整する
ヨーグルトメーカーの設定を見直すのもポイントです。多くの乳酸菌が活発に働く温度は40〜43℃前後。
- 標準:40℃ × 8〜10時間
- 固めたい場合:42℃ × 10〜12時間
このように、温度を少し上げ、時間を長めに設定することで、酸が十分に生成され、たんぱく質がしっかり固まります。
ただし、長くしすぎると酸味が強くなり、風味が損なわれることもあるため、まずは1時間単位で試しながら自分の“ベスト設定”を探すのがコツです。
3. 種菌を選ぶ・変えてみる
「ヨーグルトのかたさ」は、使う菌の種類でも変わります。もしいつも“トロトロ”になってしまうなら、かために仕上がる菌株のヨーグルトを種菌に変えてみましょう。
目安としては、
- プレーンタイプ(加糖なし)
- “ギリシャヨーグルト風”など、もともと濃厚タイプの市販ヨーグルト
を使うと安定して固まりやすいです。また、同じ種菌を何度も“植え継ぎ”していると菌の力が弱まるので、3〜4回に1度は新しい種菌を使うようにしましょう。
4. 発酵後はすぐ冷やす
発酵が終わった後、そのまま常温で放置していませんか?実はこれも、ヨーグルトがゆるくなる原因の一つです。
発酵を止めないと酸がどんどん強くなり、タンパク質が分解されてホエイ(水分)が出てしまいます。完成したら、そのまま冷蔵庫に入れて2〜3時間冷やすことで、ゲルが落ち着いてさらにしっかりした食感になります。
5. 水切りで“ギリシャヨーグルト風”に
「それでもまだゆるい」と感じる場合は、水切りヨーグルトがおすすめです。キッチンペーパーやコーヒーフィルターを使ってホエイを抜くと、短時間でかためのヨーグルトになります。
方法は簡単です。
- ボウルにざるをのせ、キッチンペーパーを敷く
- ヨーグルトを入れ、冷蔵庫で3〜5時間置く
- 下に溜まったホエイを捨てれば完成
これで、市販のギリシャヨーグルトに近い濃厚さになります。
6. 清潔な道具と新鮮な材料を使う
せっかく温度や時間を調整しても、雑菌が混ざると乳酸菌の働きが鈍り、思うように固まりません。
- 容器・スプーン・ふたは熱湯消毒またはアルコール除菌
- 牛乳・ヨーグルトは開封したてを使用
- 仕込む前に手を清潔にする
この3点を守るだけで、ヨーグルトの仕上がりは格段に安定します。
こうしたポイントを押さえると、ヨーグルトメーカーでも十分に「スプーンですくえる硬さ」に仕上げられます。次は、ここまでの内容を整理しつつ、失敗しないためのコツをまとめます。
まとめ

ヨーグルトメーカーで作ったヨーグルトがゆるくなってしまうのは、決して失敗ではありません。実はその裏に、いくつかの小さな“理由”が隠れています。
原因の多くは、次のようなシンプルな要素に集約されます。
- 牛乳の種類(無脂乳固形分・たんぱく質量)
- 発酵温度と時間のバランス
- 種菌(ヨーグルトのもと)の性質
- ホエイ(水分)の出方
- 衛生状態や冷却のタイミング
これらのうち、ひとつでも整えてあげるだけで、仕上がりは大きく変わります。たとえば、成分無調整牛乳を使い、40〜42℃で10時間ほど発酵させるだけでも、食感はぐっと安定します。
さらに、水切りをプラスすれば、濃厚でコクのあるギリシャヨーグルト風に。まるで市販品のような満足感を、家庭でも味わうことができます。
ヨーグルト作りは、ちょっとした“理科の実験”のようなもの。温度や材料の違いを少しずつ調整して、自分好みの食感を見つけるのも楽しみのひとつです。
だんだんと「我が家のベストなヨーグルト設定」が分かってくると思います!


