ジャガイモをたくさん収穫できた年って、「これ、来年の種芋にできるかな?」って思いますよね。
実は、家庭で収穫したジャガイモをそのまま“種芋”にすることは、できなくはないけれど、注意が必要なんです。
病気のリスクや品質の低下など、知らないうちに次の年の収穫に悪影響が出ることも…。
この記事では、家庭菜園でも失敗しないためのポイントを、やさしく解説していきます。
自家製ジャガイモを種芋に使えるの?(結論)

家庭菜園で収穫したジャガイモ、「来年の種芋に使えたら便利だな〜」って思いますよね。
家庭菜園で収穫したジャガイモは次の年の種芋に使えることもありますが、「要注意」なんです。
安心して翌年の収量を期待するなら、市販の種芋を使う方が安全と言えます。
なぜかというと、次のような理由があるからです↓
- じゃがいもは「種芋(たねいも)」として植える芋が無病・健全であることが非常に重要です。例えば、種芋が病気に感染していると、収量が大きく落ちてしまうことが確認されています。
- 「食用に育てた芋」をそのまま翌年に植えるということには、病害虫・ウイルスのリスクがどうしても残ります。家庭菜園の経験談・解説サイトでも「種芋は購入した方が安心」とされているところがあります。
- 制度的にも、国内では種芋流通のための「無病の種芋を使う」仕組みが整えられており、家庭菜園で「昨年収穫の芋を種芋に使う」ことは、農業生産の制度側から見ると例外的な扱いです。
では次に、「なんでそこまでリスクがあるの?」を詳しく見ていきましょう。
なぜ再利用が難しいの?

モザイク病が出てしまったジャガイモの株
ジャガイモって、見た目が元気でも「中身は病気持ち」なんてことがあるんです。
だから、収穫した芋を次の年の種芋に使うのは、実はちょっとリスクが高いんです。
● ウイルスや病害虫がたまりやすい
ジャガイモは、ウイルスや病気にかかっても目で見て分からないことが多く、「見た目は元気でも感染している」場合があります。
代表的なウイルスには、PVY(ポテトウイルスY)、PVX、PLRVなどがあり、感染した芋を植えると、翌年は芽の勢いが弱くなったり、収穫量が減ったりしてしまいます。
JAの資料を見てみたところ、種芋を何年も更新せず使い続けると、ウイルスが蓄積して3年目には収量が大きく落ちることが確認されています。
参考:JA資料
つまり「毎年同じ芋を使いまわす」と、年々できが悪くなってしまうんですね。
● 食用芋は“種芋用”に作られていない
市販されている食用ジャガイモと、種芋用のジャガイモは目的が違います。
種芋は最初から「病気にかかっていない親芋」から育て、何度も検査・選抜を受けて出荷される特別なもの。
一方、食用芋は味や見た目が優先なので、ウイルスチェックは行われていません。
そのため、見た目が同じでも「中身の安全性」が全く違うのです。
● 同じ畑で続けると連作障害が出る
さらに、ジャガイモを毎年同じ場所に植えると、連作障害(土の中の病原菌や線虫が増える現象)が起きやすくなります。
特に、ジャガイモシロシストセンチュウや疫病菌が土に残っていると、翌年の苗がうまく育たないこともあります。
これらの理由から、家庭菜園でも「自家製の芋を何年も続けて種芋にする」のはおすすめできません。
でも、「せっかく収穫した芋、ちょっと試してみたい!」という気持ちもありますよね。
次は、自家製の芋を安全に「種芋代わり」に使うためのポイントをお伝えします。
それでも使いたい!自家製ジャガイモを種芋にする時の注意点

「リスクがあるのは分かったけど、ちょっと試してみたい!」という方も多いはず。
そんなときは、できるだけ安全にチャレンジするためのポイントを押さえておきましょう。
1. 健康な芋を選ぶこと
まず大切なのは、見た目も育ちも健康だった株から芋を選ぶこと。
葉っぱが黄色くなったり、斑点が出ていたり、茎がねじれていた株の芋は避けましょう。
病気やウイルスに感染している可能性があります。
また、傷やカビがある芋、極端に小さい芋もNG。
「形や色つやが良く、収穫時に勢いがあった株の芋」を目安に選びましょう。
2. 保存方法に注意する
選んだ芋は、乾かしてから冷暗所で保存します。
風通しがよく、10〜15℃前後の場所が理想です。
新聞紙に包んで段ボールに入れておくと安心。
湿気が多い場所はカビが生えやすく、乾燥しすぎると芽が弱ります。
保存中は時々チェックして、腐った芋があれば早めに取り除きましょう。
3. 植える前に「浴光催芽(ようこうさいが)」をする
「浴光催芽(ようこうさいが)」は農家さんも行う大切な作業。
植える1か月ほど前から、日当たりのよい場所で芋に光を当てて芽を出させる方法です。
芽がしっかりして生育がそろいやすくなります。
光に当てると皮がうっすら緑になり、芽が短く太く育ちます。
これが「いい種芋」のサインです。
4. 同じ畑には続けて植えない
前年と同じ畑に植えると、土の中に残った病原菌や害虫の影響を受けやすくなります。
できれば2〜3年は間をあけて、別の場所に植えるようにしましょう。
ピーマン、ナス、トマトなどナス科の植物を育てた場所も避けるのがポイントです。
この4つのポイントを守れば、「自家製種芋チャレンジ」の成功率はぐっと上がりますよ。
続いて、家庭菜園で「安心してジャガイモ栽培を楽しむコツ」を紹介します。
家庭菜園で安全に楽しむコツ

ジャガイモは、ちょっとだけ工夫するだけで、安心して楽しめます。
具体的なコツを見ていきましょう。
● 種芋を購入して「ベース」を整える
もし「安定的に収穫したい!」と思うなら、無病証明付きの種芋を購入するのが安心です。
自家製芋を使うチャレンジは、収量や品質が落ちる可能性もあるので、まずは「プロ仕様の種芋」を使うのが安心。
● 土づくりと輪作(ローテーション)を意識する
種芋にせよ自家製芋にせよ、同じ場所にじゃがいもを毎年植えるのは避けましょう。
じゃがいもはナス科の植物なので、トマト・ナスなどと同じ畑に続けて植えると、病気や害虫が増えやすくなります。
ジャガイモの連作障害を避ける理想的な輪作は、4つの異なる科の作物をローテーションさせることです。
$$\underbrace{\text{ジャガイモ}}_{\text{ナス科}} \rightarrow \underbrace{\text{アブラナ科}}_{\text{例:キャベツ}} \rightarrow \underbrace{\text{マメ科}}_{\text{例:エダマメ}} \rightarrow \underbrace{\text{イネ科/ユリ科}}_{\text{例:トウモロコシ/ネギ}} \rightarrow \text{(4年後)} \rightarrow \underbrace{\text{再びジャガイモ}}_{\text{ナス科}}$$
↑このような流れを意識することで、病害や害虫の蓄積を防げます。
● 畑の状態を毎年チェックする
収穫後だけでなく、植付け前・植付け中・収穫後の流れを観察しておくと
今年は何が良かったか?何がまずかったか?
が見えてきます。
例えば、株数・芽の出方・葉の色・芋の大きさ・収量などを記録しておくと、次年度の種芋選びや畑選びに役立ちます。
● 気軽に「チャレンジ枠」として楽しむ
「自家製じゃがいもを種芋にする」というのは、家庭菜園におけるチャレンジとして楽しむスタンスが◎。
「今年は市販の種芋で本命、隣の畝で自家採種芋チャレンジ」など並行運用して、比べてみるのもおすすめです。
失敗しても「学び」になりますし、次年度に活きます。
次で、この記事のまとめを見ていきましょう。
この記事のまとめ

ジャガイモをたくさん収穫できた年ほど、「来年はこの芋を種芋にできたらいいのに…」と思いますよね。
最後に、この記事のポイントを整理しておきます。
まず、いちばん大事な結論はこの2つです。
- 自家製のジャガイモを種芋として使うことは「不可能ではない」
- ただし、病気やウイルス、連作障害などのリスクがあるので、基本的には市販の種芋が安心
そのうえで、「ちょっと試してみたい」というときは、次のポイントを守るのがおすすめです。
- 葉や茎が健康だった株から、見た目も傷もない芋だけを選ぶ
- 収穫後は、風通しの良い冷暗所で保存して、ときどき腐敗チェックをする
- 植え付け前に浴光催芽をして、芽を短く太く育てておく
- 同じ場所やナス科の後ろに続けて植えず、輪作(ローテーション)で土を休ませる
特に、輪作については、次のように科の違う作物をローテーションさせる「4年サイクル」を意識しておくと、土の疲れや病原菌の蓄積をかなり抑えることができます。
そして、家庭菜園でいちばん大切なのは「全部を完璧にすること」よりも、次のように自分なりのバランスを見つけていくことかもしれません。
- 市販の種芋で「安定した収穫ゾーン」
- 自家製種芋で「チャレンジ&実験ゾーン」
「今年はどうだったかな?」とメモを残しておくと、来年の種芋選びや畑の使い方にきっと役立ってくれますよ。


